June 09, 2021

落日

陽は

やがてどうやっても沈むものだ

私を追い越し

はるか先に地球の裏側を見る前に

愛惜の温石を腹に抱いて

深く穏やかに眠れ

あまりに速い波濤の末に

凪いだ大海にその身を委ね

全てを珠に染めて

眠れ

あなたの短い1日が

山に

海原に愛され続けることを私は願う

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April 19, 2021

青春

青春 青春
   青春 青春 青春
 青春 青春
           青春 青春 青春 青春
     青春    青春
青春

列車が走り去った
たくさんの制服の群れが駅のホームに行き交う

もう新緑ではなくなってしまう。
明日にも五月雨が始まる。


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March 15, 2021

米って左右対称じゃない
犬歯のように少し欠けてる
その犬歯みたいな米は
臼歯で噛むと甘くなる
そういえば
オオカミの犬歯を
あの人はお守りにしていた
もっと噛んでくれてもよかったのに


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March 14, 2021

花桃の木

昔、愛した女の庭には
大きな花桃の木があった。

その木は
春になると
その女の唇のような
濃い
桃色の花を枝いっぱいにつける。

その花びらひとつひとつは
どうしてもその女の爪の形だ
私にとって春は
その女の体温の到来で
陽だまりには
どこか獣じみた

その女の皮脂の匂いがある。


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March 08, 2021

冬の終わりの雨

冬の終わりに
ふと
雨が降り出す
雨に打たれて
ふと
今わたしを温めうるのは

人肌だけなのを知る。


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March 07, 2021

太陽の果実

桃の芽が膨らんでいる
蜜に満ちた大きな実になるのに三月
その前に花が咲く
あの桃色の
あの花が咲く


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March 06, 2021

キムチ味噌ラーメン

味噌ラーメンは北の食べ物だ。
キムチは韓国の漬け物だ。
これをたしたらうまいだろうな
そういう野心が好きだ
その野心が百杯のラーメンではなく
この一杯のラーメンになる
ところが好きだ

私の身になるのはその一杯のラーメンだからだ。



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March 05, 2021

匂い


古い家の
庭の奥にある
沈丁花が匂い始めた
古い家の
古い歴史の
春の匂いに
春の陽が
陽だまりが
町中が染まっていく
もう誰も生きていなかった
古い時代の春が
足元から広がってゆく


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March 04, 2021

階段の上

階段の上に立つと眺めがいい
どこまでもずっと見通せる
そうしてどの階段にも
またその後ろに秘密の階段がある
それが素敵だ


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March 03, 2021

一晩中軒がガタガタとなっている
大きな手が壁を叩くような音がする
このまま屋根がなくなりそうだ
この屋根が飛ばされたなら
ボクもボクの暮らしも無防備になる
これが自由ということであればだが
ボクは犬のように怯えて眠る

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